※本記事は特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。掲載数値は2026年10月7日時点の四季報オンラインのスクリーニング結果を中心に整理したもので、株価や業績予想は変動します。投資判断は最新の決算資料等を確認したうえで、ご自身の判断で行ってください。
PERとPBRは、どちらも「株価が企業の利益や純資産に対してどの程度評価されているか」を見る代表的な指標です。今回はこの2つを同時に使い、「両方とも低い企業」と「両方とも高い企業」を比較します。
四季報オンラインで、低い側を「PER10倍以下・PBR1倍以下」、高い側を「PER20倍以上・PBR2倍以上」と設定したところ、前者は431社、後者は519社でした。この記事では全銘柄を羅列するのではなく、PER順に確認した各60社を入口として、利益成長率やROEまで見て気になった企業を深掘りします。

今回のスクリーニング条件
| グループ | PER | PBR | 該当社数 |
| 低PER×低PBR | 10倍以下 | 1倍以下 | 431社 |
| 高PER×高PBR | 20倍以上 | 2倍以上 | 519社 |
注意したいのは、PER・PBRだけでは将来の株価は決まらないことです。PERが低い企業には一時的な利益増でPERが下がっている企業も、高PER企業には利益が小さいためPERが異常に膨らんでいる企業も含まれます。そのため今回は、営業利益・当期利益の増減率、ROEなども合わせて見ます。
先に結論:今回、特に気になった4社
| 銘柄 | グループ | 今回の見方 | 主な理由 |
| ランドネット(2991) | 低PER×低PBR | 上昇余地を検討したい | PER3.99倍・PBR0.93倍。利益成長とROE上昇が同時に見える |
| フォーライフ(3477) | 低PER×低PBR | 上昇余地を検討したい | PER5.21倍・PBR0.80倍。営業利益成長とROE改善が比較的きれい |
| 味の素(2802) | 高PER×高PBR | 評価維持に注意 | PER41.83倍・PBR6.62倍に対し、画面上の利益成長率は比較的穏やか |
| ZenmuTech(338A) | 高PER×高PBR | 変動リスクに注意 | PER45.27倍・PBR17.80倍。高ROEだが来期当期利益予想の減益が目立つ |
ここで「上昇余地」「注意」としたのは予想を断定する意味ではありません。現在の評価倍率と業績の組み合わせから、追加で調べる価値が高いと判断した銘柄です。
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低PER×低PBR:安い理由を見分ける
低PER×低PBRの上位60社には、不動産、建設、素材・化学、卸売・小売など、成熟企業や景気の影響を受けやすい企業が複数見られました。一方、同じ低評価でも利益成長やROE改善が見える会社があります。ここを区別しないと「安いから買い」という典型的なバリュートラップに入りやすくなります。

注目① ランドネット(2991)
四季報画面では株価510円、PER3.99倍、PBR0.93倍。営業利益増減率は前期→今期予想+46.55%、今期予想→来期予想+17.85%、当期利益も+30.85%、+12.90%。ROEも17.92%から23.46%へ上昇しています。低PER・低PBRなのに、利益成長と資本効率が悪化していない点が今回の60社の中では目立ちます。
会社は中古不動産の買取・リフォーム・仲介・賃貸管理を主力としており、決算期は7月です。公式IRでも2026年の通期決算発表時期は9月とされています。したがって、記事公開時には最新の通期資料を再確認する前提で扱います。
見方:『低評価なのに成長が続く』状態が確認できるなら、評価見直し余地を検討しやすい銘柄です。一方、不動産は金利・在庫回転・仕入環境の影響を受けるため、PERだけを根拠に強気にはできません。
注目② フォーライフ(3477)
四季報画面では株価882円、PER5.21倍、PBR0.80倍。営業利益増減率は+19.31%、+19.04%、当期利益増減率は+25.00%、+17.64%。ROEも12.48%から15.60%へ上昇しています。今回の低PER×低PBR群では、割安指標と利益成長が比較的素直に両立している銘柄です。
公式IRでは2026年8月6日に2027年3月期第1四半期決算を公表し、9月24日には東証スタンダード市場への市場区分変更を公表しています。次の第2四半期決算発表は11月12日の予定です。
見方:低PER・PBR1倍割れに加えROE改善が続くなら面白い一方、住宅関連企業なので販売戸数、土地・建築コスト、住宅ローン金利の影響は要確認です。
参考:理論株価ではなく「機械的な評価ライン」を置く
今回、精密な理論株価を無理に掲載するのは見送りました。理由は、適正PERや適正PBRを決めるには同業比較、成長率、財務、金利環境まで必要で、2指標の記事で1つの数字に固定すると精度以上の説得力を持たせてしまうためです。
ただし、現在の株価・PER・PBRから機械的な参考ラインは計算できます。ランドネットはPBR1倍ラインが約548円、PER10倍ラインが約1,278円。フォーライフはPBR1倍ラインが約1,103円、PER10倍ラインが約1,693円です。これは『目標株価』ではありません。現在のEPS/BPSが変わらず、市場評価だけがそれぞれ1倍・10倍になった場合の単純計算です。
この参考値は、割安度の大きさを直感的に見る補助線としてのみ使います。実際の株価評価では、次期利益の変化や資本構成も確認する必要があります。
高PER×高PBR:高評価に見合う成長かを見る
高PER×高PBRの上位には、AI、サイバーセキュリティ、ITサービスなど成長期待の大きい企業が目立ちます。同時に、利益が小さいためPERが数百倍になっている企業もあり、『PERが高い=割高』と単純には言えません。
実際、VRAIN Solutionは四季報画面でPER54.65倍・PBR25.66倍と非常に高い一方、営業利益増減率+58.64%→+51.72%、ROE31.25%→46.50%と高成長・高ROEです。FFRIセキュリティもPER55.89倍・PBR18.25倍ながらROE29.09%→33.62%で、単純な『下落候補』にはしにくいと判断しました。VRAIN Solutionは製造業向けAIソリューション企業で、FFRIセキュリティは2027年3月期第1四半期を8月13日に発表済みです。

注意① 味の素(2802)
四季報画面では株価5,346円、PER41.83倍、PBR6.62倍、ROEは17.47%→16.28%。営業利益増減率は前期→今期予想-5.23%、今期予想→来期予想+0.52%となっています。高PER・高PBRに対して、少なくとも今回の画面上では利益成長が強烈というわけではありません。
もちろん、ブランド力や事業の質、将来の構造改革など、倍率だけに現れない価値があります。それでも『高い評価を維持するには何が必要か』を考える材料としては適しています。成長期待が下方修正された場合、PER・PBRの両方から評価修正を受ける可能性がある点を注意材料とします。
注意② ZenmuTech(338A)
四季報画面では株価4,990円、PER45.27倍、PBR17.80倍。ROEは19.15%→37.08%と非常に高い一方、当期利益増減率は今期予想+93.54%の後、来期予想-40.00%となっています。営業利益は+11.11%→+25.00%なので、利益項目による動きの違いを確認する必要があります。
見方:高PBRを正当化できる高ROEは魅力ですが、高評価銘柄は業績が『良い』だけでは足りず、市場予想を上回り続けることが求められやすい点がリスクです。来期純利益の減少理由が一時要因なのか構造要因なのかを確認するまでは、下落候補と断定せず『評価変動リスクが高い銘柄』として扱います。
高PERでも今回は下落候補にしなかった企業
VRAIN SolutionやFFRIセキュリティのように、高PER・高PBRでも利益成長率とROEが非常に高い企業は、倍率だけを見て下落候補にするのは危険です。高い期待がすでに株価に入っているというリスクはありますが、その期待を業績が追いかけている間は高倍率が維持されることもあります。
この点こそ、PERとPBRを組み合わせる意味です。『高いから売り』『低いから買い』ではなく、その倍率を企業の成長と資本効率が説明できるかを見る必要があります。
今回の分析から分かったこと
- 低PER×低PBRでも、利益成長・ROE改善を伴う企業は存在する。
- 高PER×高PBRでも、高成長・高ROEなら単純な割高株とは言えない。
- 極端なPERは、一時的に利益が小さいことで膨らんでいる場合がある。
- 割安株では『安い理由』、成長株では『高い評価を維持できる理由』を探すことが重要。
- 理論株価は便利だが、前提を置かずに1つの数字を出すと誤解を招く。
次回は「低PER×高PBR」「高PER×低PBR」
次の記事では方向が逆になる2パターンを扱います。低PERなのにPBRが高い企業、高PERなのにPBRが低い企業は、今回よりも『なぜ2つの指標が逆方向なのか』を考える面白さがあります。
まとめ
PERとPBRを組み合わせると、単独指標だけでは見えにくかった企業の違いが浮かびます。今回の431社・519社のスクリーニングでは、低評価でも成長が見える企業、高評価でも成長が評価を支えている企業、高い倍率に対して利益成長が追いつくか注意したい企業が混在していました。
大切なのは、スクリーニングを『答え』ではなく『調べる企業を絞る入口』として使うことです。


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