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PERが低い会社を見ると、「株価が利益に対して安いのでは?」と感じます。ですが、PERが低い理由は一つではありません。利益が今期だけ大きく増えている会社、来期に反動減が予想されている会社、業績や業界への不安を市場が織り込んでいる会社もあります。
そこで今回は、あえてPERだけを主役にして、日本株全体から「割安に見える側」を探します。PBR、配当利回り、ROE、キャッシュフローなどは最初の抽出条件には入れません。まずPERという1つの物差しだけで候補を出すと何が見えるのかを試し、その後に利益予想や事業内容を確認する実験編です。
※この記事は特定銘柄の購入・売却を勧めるものではありません。四季報の数値は2026年9月に実施したスクリーニング画面を基準としています。株価・予想利益・PERは変動します。記事中の「参考理論株価」はPERだけから計算した比較用の試算で、将来の株価を予測・保証するものではありません。
今回のPERスクリーニング条件
まずPER(今期)の全体分布を確認すると、対象3,631社、最小0.35倍、最大1,345倍、平均25.11倍、中央値14.91倍でした。平均値は極端な高PER銘柄の影響を受けやすいため、今回は中央値も基準として確認しています。
| 段階 | 条件 | 該当数 |
| 全体 | PER(今期)のデータがある企業 | 3,631社 |
| STEP1 | PER(今期)≦10倍 | 671社 |
| STEP2 | STEP1 + PER(今期)÷PER(高値平均)≦0.70 | 275社 |
PER10倍以下だけでは671社と多かったため、「現在のPERが、その企業自身の過去の高値平均PERと比べても70%以下」という条件を重ねました。これは割安を証明する条件ではなく、調査対象を絞るためのルールです。
275社をPERの低い順に並べると、かなり極端な数字が出た

| 順番 | コード | 銘柄 | 株価*9/18終値 | PER今期 | 今期PER÷高値平均PER | 営業利益 前期→今期予 | 当期利益 前期→今期予 |
| 1 | 3856 | Abalance | 230円 | 1.01倍 | 0.04 | -21.03% | -44.32% |
| 2 | 3260 | エスポア | 70円 | 1.34倍 | 0.00 | +2,900.00% | +2,627.27% |
| 3 | 2501 | サッポロビール | 1,848円 | 2.45倍 | 0.03 | -75.45% | +1,418.10% |
| 4 | 1873 | 日本ハウスHD | 312円 | 3.28倍 | 0.28 | -11.77% | +183.58% |
| 5 | 2991 | ランドネット | 527円 | 4.07倍 | 0.57 | +46.55% | +30.85% |
| 6 | 5753 | 日本伸銅 | 2,590円 | 4.09倍 | 0.55 | +11.35% | +102.15% |
| 7 | 3760 | ケイブ | 719円 | 4.09倍 | 0.16 | ― | ― |
| 8 | 5965 | フジマック | 1,210円 | 4.42倍 | 0.63 | -7.93% | +66.45% |
| 9 | 3696 | セレス | 2,192円 | 4.45倍 | 0.13 | +58.52% | +140.28% |
| 10 | 5283 | 高見澤 | 3,120円 | 4.57倍 | 0.59 | +14.36% | -0.75% |
* 株価は今回の四季報スクリーニング画面に表示された同一時点の株価。PERなども同じスクリーニング実施時点の数値で、株価・PERは日々変動します。
※「順番」は今回の抽出結果をPERの低い順に並べたものです。「割安度の順位」や投資判断の順位ではありません。
一覧だけでも、低PERの理由が同じではないことが分かります。1位のAbalanceはPER1.01倍ですが、四季報予想では営業利益・当期利益とも前期比マイナス。一方、ランドネットはPER4.07倍ながら営業利益・当期利益とも増益予想です。サッポロビールは当期利益が今期+1,418.10%予想の一方、来期予想は-92.40%で、今期だけの大きな利益変動を疑うべき形です。
PERだけで2つの「参考理論株価」を計算してみる
ここで、今回の企画らしくPERだけを使って株価をもう一歩比較します。複雑な企業価値評価に進む前に、同じ予想EPSに対して「その会社自身の高値平均PER」と「全社一律15倍」という2つの倍率を当てたら、どんな株価になるかを見ます。
まず、四季報画面の「現在株価 ÷ PER(今期)」から、PER計算に使われている今期予想EPSを逆算します。次に「PER(今期)÷PER(高値平均)」から高値平均PERを逆算し、企業別の参考株価を計算します。
計算式① 今期予想EPS ≒ 現在株価 ÷ PER(今期)
計算式② 企業別PER参考株価 ≒ 今期予想EPS × 高値平均PER
計算式③ 一律15倍参考株価 ≒ 今期予想EPS × 15倍
企業別PER参考株価は会社ごとの過去の評価水準を残した比較、一律15倍は業種差を無視して全社を同じ物差しで見る比較です。どちらも「適正株価」の断定ではありません。
| 銘柄 | 現在株価9/18終値 | PER | 逆算EPS | 高値平均PER | 企業別PER基準の参考株価 | PER15倍基準の参考株価 |
| Abalance | 230円 | 1.01 | 227.7円 | 25.25 | 5,750円 | 3,416円 |
| エスポア | 70円 | 1.34 | 52.2円 | 算出不可* | 算出不可* | 784円 |
| サッポロビール | 1,848円 | 2.45 | 754.3円 | 81.67 | 61,600円 | 11,314円 |
| 日本ハウスHD | 312円 | 3.28 | 95.1円 | 11.71 | 1,114円 | 1,427円 |
| ランドネット | 527円 | 4.07 | 129.5円 | 7.14 | 925円 | 1,942円 |
| 日本伸銅 | 2,590円 | 4.09 | 633.3円 | 7.44 | 4,709円 | 9,499円 |
| ケイブ | 719円 | 4.09 | 175.8円 | 25.56 | 4,494円 | 2,637円 |
| フジマック | 1,210円 | 4.42 | 273.8円 | 7.02 | 1,921円 | 4,106円 |
| セレス | 2,192円 | 4.45 | 492.6円 | 34.23 | 16,862円 | 7,389円 |
| 高見澤 | 3,120円 | 4.57 | 682.7円 | 7.75 | 5,288円 | 10,241円 |
* エスポアは四季報画面の「PER(今期)÷PER(高値平均)」が0.00と丸め表示されているため、表示値だけから高値平均PERを逆算できません。無理に推定せず「算出不可」としました。
たとえばランドネットは現在527円に対し、企業別の高値平均PERを使うと約925円、一律15倍なら約1,942円です。一方、サッポロビールやセレスのように逆算した高値平均PERが非常に高い銘柄では、参考株価も極端に大きくなります。つまり「計算できたから正しい」のではなく、倍率の背景を確認しないと理論株価は簡単に膨らみます。
前回の記事ではPER法だけでなくPBR法も使い、複数の物差しから理論株価レンジを作りました。今回はシリーズの最初として「PERだけで試す」ことが目的なので、あえてPBR法を混ぜていません。次のPBR編では別の物差しから検証し、最後に複数指標を重ねていく予定です。
「低PER=割安」とは限らない4つのパターン
| パターン | 一覧で見えるサイン | 確認すること |
| ① 今期だけ利益が急増 | 当期利益が数百~数千%増 | 特別利益・資産売却など一時要因 |
| ② 来期に反動減 | 今期急増→来期大幅減 | 今期EPSが持続可能か |
| ③ 本業が減速 | 営業利益が減益 | 需要・コスト・競争環境 |
| ④ 利益成長が続くのに低PER | 今期・来期とも営業利益や最終利益が増える | 市場が何のリスクを織り込んでいるか |
今回の企画で面白いのは④です。ただし④に見えても、それだけで「市場が間違っている」とは言えません。小型株の流動性、財務、業界の成長性、資本政策など、PER以外の理由が残っている可能性があります。

特に「なぜ低い?」と調べたくなった企業
ランドネット|利益成長予想が続くのにPER4倍台
ランドネットは中古マンションなどの不動産売買・仲介、賃貸管理などを手掛ける不動産会社です。四季報の今回の画面ではPER4.07倍、営業利益は前期→今期予+46.55%、今期予→来期予+17.85%、当期利益も+30.85%→+12.90%と、少なくとも予想値上は利益成長が続く形でした。
会社のIRでは決算資料や過去業績を継続公開しており、7月決算です。2021年に東証へ上場し、現在はスタンダード市場です。低PERの背景を見るときは、不動産市況、仕入れ価格、金利、在庫回転、事業拡大に伴う資金需要などを確認する必要があります。
住宅市場そのものも一方向ではありません。国土交通省によると2025年度の新設住宅着工は前年度比で減少しましたが、2026年6月・7月は前年同月比で増加しました。短期の回復だけで住宅・不動産市場全体を強いと判断せず、月次と年度の両方を見る必要があります。
出典:ランドネット公式IR/国土交通省「建築着工統計調査報告」
フォーライフ|PER5倍台、利益予想も今期・来期ともプラス
PER順では14番目のフォーライフも確認したい企業です。今回の四季報画面ではPER5.35倍、営業利益は前期→今期予+19.31%、今期予→来期予+19.04%、当期利益も+25.00%→+17.64%でした。
フォーライフは首都圏を中心に分譲住宅・注文住宅・再生住宅を展開しています。公式IRの業績ハイライトでは、売上高は2024年3月期139.87億円、2025年3月期147.71億円、2026年3月期174.76億円。営業利益は同2.61億円→5.91億円→8.80億円と回復しています。2027年3月期1Qの売上高は37.51億円、営業利益1.94億円でした。
一方で住宅会社なので、土地価格・建築コスト・住宅ローン金利・首都圏の住宅需要の影響は無視できません。低PERだけでなく、販売戸数、粗利率、在庫、土地仕入れまで追う必要があります。
出典:フォーライフ公式IR「業績ハイライト」「決算短信」/国土交通省住宅着工統計
ケイアイスター不動産|PER5.36倍、今期・来期とも増益予想
15番目のケイアイスター不動産は、今回の四季報画面でPER5.36倍。営業利益は+27.80%→+7.53%、当期利益は+25.69%→+8.29%の予想でした。会社は分譲住宅を中心に事業を展開し、IRでは「中期経営計画2028」も公開しています。
ここでも重要なのは、利益成長予想があるから自動的に割安ということではありません。戸建住宅は土地・資材・人件費・金利・住宅需要に左右されます。2025年度の住宅着工が減少した一方、2026年夏には前年同月比プラスの月も出ており、市場環境は単純な一本調子ではありません。
出典:ケイアイスター不動産公式IR/国土交通省住宅着工統計
上位の極端な低PERは「数字の理由」を先に確認したい
PER1~3倍台の企業については、むしろ慎重に見たいところです。Abalanceの公式IRには2026年3月期の決算短信に加え、過年度決算の訂正資料も掲載されています。数字を使う場合は最新の訂正後資料を確認する必要があります。
日本伸銅も2026年8月に業績予想の修正とデリバティブ損失・評価損の計上を公表しています。営業利益と最終利益が同じ動きをしない理由を確認する好例です。PERは最終利益をもとに計算されるため、本業以外の損益が大きい年には見え方が変わります。
このため、今回の低PER順の先頭をそのまま「おすすめ10社」とは扱いません。極端な数字ほど、決算短信の注記や特別損益、業績予想の前提まで読む必要があります。
出典:Abalance公式IR「決算短信」/日本伸銅公式IR「IRニュース」「決算短信」
市場環境もPERの背景になる
企業単体の利益だけでなく、その会社がいる市場も株価評価に影響します。住宅関連では2025年度の新設住宅着工が減少。外食では日本フードサービス協会が毎月の市場動向を継続公表しており、業態ごとに環境が異なります。太陽光関連では、経済産業省が2030年代後半以降の使用済み太陽光パネル排出増加を見込み、リサイクル制度整備を進めています。
つまりPERが低い理由を探すときは、「会社の利益」→「一時要因」→「来期」→「業界・市場」の順に見ると整理しやすくなります。
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今回の結論|PERは「答え」ではなく、理由を探す入口
今回、四季報全体3,631社からPER10倍以下で671社、さらに現在PERが過去の高値平均PERの70%以下という条件を重ねると275社まで絞れました。
ところが低PER順に並べると、今期だけ最終利益が急増する企業、来期に大幅反動減が予想される企業、本業の営業利益が減る企業、逆に利益成長予想が続く企業が混在していました。
だから「PERが低い=割安」ではありません。さらにPERだけから2種類の参考理論株価を計算すると、使う倍率によって結果が大きく変わることも確認できました。PERで候補を見つけたあとに、利益の中身、来期予想、過去数年の推移、業界環境まで確認して初めて、なぜ低いのかを考えられます。
次回は反対側です。PER30倍以上で、さらに現在PERがその企業自身の過去の安値平均PERと比べても高い企業を抽出しました。「PERで割高に見える企業」は、なぜ高い評価を受けているのか。それとも利益が小さくなった結果、PERだけが跳ねているのかを調べます。
【次回予告】PERで割高に見える企業を四季報全体から調査



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